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Automation

業務自動化への投資、何から始めるべきか

自動化の対象を勘ではなく数値で選ぶための4段階の診断手順です。適合度の評価表と回収期間の計算式、業種別の適用例、そして個人情報・規制を含む着手前のチェック項目をまとめました。

いま企業が置かれている状況

人件費は上がり、人を採るのは難しくなりました。それでも処理すべき業務量は減りません。多くの企業がこの差を自動化で埋めようとしますが、いざ始めようとすると「何から手をつけるべきか」で止まってしまいます。

問題は、自動化できる対象がないことではありません。むしろ多すぎることです。全社的な資源管理システムを持つ企業でさえ、実際の業務時間のかなりの部分はシステムの外側で消費されています。発注書をメールから取り出してシステムに入力し直す、物流会社のサイトから送り状番号をコピーして取引先の様式に貼り付ける、締めのたびに複数のシートを手作業で突き合わせる、といった作業が代表的です。

これらの作業は、ひとつひとつは些細に見えます。だから改善課題の一覧に上がってきません。しかし担当者ひとりが1日90分をこうした作業に使っているなら、20人規模の組織では年間およそ7,500時間が消えている計算になります。正社員3.5人分の業務量です。

より大きな損失は時間ではなくミスと遅れです。人が書き写す過程には必ず誤りが生まれ、担当者が席を外せば処理は止まります。このコストはどの帳簿にも記録されないため、問題が表に出るときにはすでに顧客からのクレームや締めの遅延という形をとっています。

なぜ自動化のプロジェクトは期待に届かないのか

自動化の導入が失敗する場合、原因のほとんどは技術ではなく対象の選び方にあります。三つのパターンが繰り返されます。

ひとつ、例外が支配する業務を選んでしまった。 全体の件数の半分以上が例外処理であれば、自動化は仕事を減らすかわりに「自動処理の結果が正しいか確認する仕事」を新たに生みます。担当者から見れば業務が増えたことになります。

ふたつ、入力データが定型化されていなかった。 取引先ごとに様式が異なる発注書、毎回項目の順序が変わるExcelファイルは、自動化の前に様式の標準化が先に必要です。この段階を飛ばすと、例外処理のロジックだけが増え続けます。

みっつ、効果を測る基準線がなかった。 導入前の所要時間を測っておかなければ、後になって「速くなった気がする」という印象しか残りません。投資に対する効果を証明できなければ、次の課題の予算も確保できません。

三つとも、着手する前に判断できる問題です。だから診断が必要になります。

自動化の二つの型をまず分けてください

診断に入る前に、自動化を二種類に分けておくと判断が単純になります。

ルールベースの自動化は、条件と処理の方法がはっきり決まっている仕事を代わりに行います。「発注書が届いたら項目を読み取ってシステムに登録する」「毎朝、在庫が基準を下回った品目を一覧で送る」といった作業です。結果がつねに同じで検証しやすく、構築の費用も比較的低く済みます。

判断を要する自動化は、入力が毎回異なり、正解がひとつに定まらない仕事を扱います。自由形式の問い合わせを分類する、様式がばらばらの文書から必要な項目だけを抽出する、顧客の質問に文章で答える、といった作業がここに当たります。扱える範囲ははるかに広いものの、間違いうるという前提で設計しなければなりません。

二つの型は検証の方法が違います。ルールベースは「そのとおりに行ったか」を見ればよいのに対し、判断を要する自動化では許容できる誤差と人が介入する時点をあらかじめ決めておく必要があります。この区別をせずに同じ基準で管理すると、後者では必ず問題が起きます。

4段階の診断フレームワーク

第1段階 — 業務の棚卸し

部署ごとに繰り返しの業務を並べ、それぞれについて三つを記録します。

  • 月あたりの発生件数
  • 1件あたりの所要時間
  • 処理を担当する人数

この段階の目的は正確さではなく、比較できる一覧を作ることです。分単位まで精密に測ろうとすると、調査そのものが終わりません。担当者に「だいたい何分かかるか」を尋ね、そのまま書いてください。誤差は、候補が絞られた後の段階で精密にすれば十分です。

経験的に、20〜30人規模の組織ではこの一覧に40〜60項目が並びます。一覧を作る過程そのものがすでに有用です。部門長さえ知らなかった繰り返し作業が、この段階で表に出ることが少なくありません。

調査のときに一つ注意があります。担当者に「何を自動化したいですか」と尋ねないでください。そう尋ねると、いちばん嫌な仕事が出てくるだけで、いちばん自動化に向いた仕事は出てきません。「昨日一日、何をしたかを時間順に教えてください」と尋ねるほうが正確です。

第2段階 — 自動化への適合度の評価

それぞれの業務を四つの軸で評価します。

評価の軸 適合 不適合
ルールの明確さ 判断の基準を文章で書ける 担当者の経験と勘に依存する
入力の定型性 様式・項目が固定されている 毎回かたちが異なる
例外の割合 10%未満 30%超
システムへのアクセス APIまたは安定した画面がある 頻繁に変わる画面

四つの軸すべてが「適合」である業務だけを一次候補として残します。ひとつでも「不適合」があれば、自動化の前にその条件を先に解決すべき課題として分類してください。たとえば入力の定型性が不適合なら、それは自動化の課題ではなく様式の標準化の課題です。

ルールの明確さを判断する簡単な方法があります。担当者に「この仕事を、入ったばかりの新人に文書だけで引き継げますか」と尋ねることです。文書で引き継げない仕事は、機械にも引き継げません。

入力の定型性が不適合でも、すぐに諦める必要はありません。先に区別した判断を要する自動化で扱える領域だからです。ただしその場合は精度の目標と検収の手順をあわせて設計する必要があるため、ルールベースの課題より準備期間を長めに見てください。

第3段階 — 回収期間の算定

一次候補についてのみ精密な測定を行い、回収期間を計算します。

年間の削減額 = 月間件数 × 12 × 1件あたりの削減時間 × 時間あたり人件費
回収期間(月) = 構築費用 ÷ ((年間の削減額 − 年間の運用費) ÷ 12)

三つの点に注意してください。

時間あたりの人件費は、給与ではなく総費用で見てください。 社会保険、退職給付、オフィスの費用まで含めると、通常は給与の1.3〜1.5倍になります。この値を給与だけで見積もると削減額が過小に評価され、本来は妥当な課題が落ちてしまいます。

1件あたりの削減時間は100%ではありません。 自動化した後も、結果の確認、例外の処理、システムの点検に時間がかかります。保守的に見るなら、従来の所要時間の70%を削減分として計算してください。

年間の運用費を必ず反映してください。 サーバーの費用、外部APIの利用料、保守契約がここに入ります。この項目を除いて計算した回収期間は、実際より短く出ます。

計算の例

数値を当てはめてみると判断がはっきりします。以下は計算の方法を示すための仮の例であり、実際の値は各企業の条件によって変わります。

取引先からメールで受け取った発注書を、社内システムに入力し直す業務を想定します。

項目 値
月あたりの発生件数 400件
1件あたりの所要時間 12分
自動化後の削減率 70%
時間あたりの総人件費 25,000 KRW
構築費用 1,800万 KRW
年間の運用費 240万 KRW

1件あたりの削減時間は 12分 × 70% = 8.4分、すなわち0.14時間です。

年間の削減額 = 400 × 12 × 0.14 × 25,000 = 16,800,000 KRW
年間の純効果 = 16,800,000 − 2,400,000 = 14,400,000 KRW
回収期間     = 18,000,000 ÷ (14,400,000 ÷ 12) = 15か月

回収期間15か月は、後述する「最初の課題は6か月以内」という基準に届きません。この場合の選択肢は三つです。件数がより多い別の業務を探すか、構築の範囲を狭めて費用を下げるか、この課題を後回しにするかです。

同じ計算を月1,200件の業務に当てはめると、年間の削減額は5,040万 KRW となり、回収期間は5か月を下回ります。件数が回収期間を支配するという点が、この計算の要です。1件あたりの時間が長い業務より、短くても頻繁に起きる業務のほうが、たいてい先になります。

第4段階 — 着手の順序を決める

回収期間の短い順に並べます。ただし、最初の課題は回収期間だけで選ばないでください。 最初の課題の条件は二つです。

  • 回収期間が6か月以内
  • 失敗しても本業が止まらない業務

二つめの条件が重要です。最初の自動化が中核の業務で問題を起こすと、組織の中で自動化という試み自体が信頼を失います。逆に最初の成功事例は、その後の課題の予算と現場の協力を引き出してくれます。最初の課題は規模ではなく確実さで選ぶのが正しい判断です。

業種ごとに先に挙がる候補

業種によって、一次候補に挙がる業務はおおむね決まっています。棚卸しをするときの参考としてお使いください。

製造・流通 — 取引先ごとの発注書の取りまとめと入力、在庫が基準を下回った際の通知、出荷指示書の作成、物流会社の送り状番号の収集と顧客への通知、月次の締めにおける複数シートの突き合わせ。

サービス・B2B — 見積書の発行、契約書の状態の追跡と満了の通知、定期請求書の発行、問い合わせの種類の分類と担当者への割当て、応対履歴の要約。

EC — 注文状態の変更の通知、返品・交換の受付の分類、商品情報の複数チャネルへの同期、レビューの収集と分類、再入荷の通知。

共通 — 勤怠・経費精算の書類の検証、新入社員のアカウント発行、定期報告書の取りまとめ、外部システム間のデータ同期。

この一覧は出発点にすぎません。実際の候補は、第2段階の評価を通ったものだけを認めてください。同じ業務でも、企業によって例外の割合と様式の定型性が異なるからです。

導入前の確認項目

着手を決めたら、次の五つが整っているかを確認してください。

基準線を測定しましたか。 導入前の所要時間・処理件数・エラー件数を記録しておく必要があります。導入後に測定を始めては、比較する対象がありません。

例外を人に渡す経路が設計されていますか。 自動化が処理できない件は必ず発生します。そのとき静かに失敗するのではなく、担当者に渡らなければなりません。この経路がないと、漏れた件を数日後に発見することになります。

自動化が止まったことに気づく手段がありますか。 人がやっていた仕事は、人がやらなければ目につきます。自動化は静かに止まります。処理件数が普段と違えば通知が来る程度の監視は、最低限そなえておくべきです。

連携先のシステムが変わったときの保守の責任が決まっていますか。 連携先の画面やAPIは予告なく変わります。そのとき誰がいつまでに直すのかが、契約または社内規定で決まっている必要があります。

個人情報と規制の要件を確認しましたか。 自動化の対象となる業務が顧客情報や従業員情報を扱うなら、着手の前に整理すべき項目があります。

  • 処理の過程で個人識別情報がどこに保存され、どれだけ保管されるのか
  • 外部サービスへデータが送信される場合、そのデータはどの国に保存されるのか
  • 処理の履歴が残っていて、後から追跡できるか
  • アクセス権限が担当者ごとに分かれているか

とくに外部の人工知能サービスを利用する場合は、入力したデータがそのサービスの学習に使われるかどうかを契約条件で必ず確認してください。この条項を確認せずに顧客情報を入力すると、技術的にはうまく動く自動化が規定違反になります。自動化の結果を人が確認する手順を残しておくことも、同じ理由で必要です。

自分で作るか、すでにあるものを使うか

対象が決まったら、実現の方法を選ぶことになります。判断の基準は、その業務が競争力の源泉かどうかです。

競合と違うやり方で処理することがその会社の強みになっている業務なら、合わせて作るほうがよいでしょう。逆に、どの会社でも同じやり方で処理する業務なら、すでに検証されたものを使うほうが速く安く済みます。勤怠の精算や電子決裁を一から作るのは、たいていの場合むだです。

ただし、既成の製品を検討するときは三つを確認してください。

自社の業務を製品に合わせられるか。 既成の製品は標準の手順を前提に作られています。現在のやり方がその前提と大きく異なるなら、製品を改修する費用より、業務を変えることへの抵抗のほうが大きくなります。

データを取り出せるか。 後で別のものへ移すときや、社内システムとつなぐときに必要になります。データの書き出し機能と連携の方式を、契約の前に確認してください。

止まったとき誰が責任を負うか。 外部サービスに依存する業務は、そのサービスの障害がそのまま自社の業務の停止になります。障害時の対応時間と補償の条件を、文書で確認しておいてください。

よく出る反対と、その受け止め方

自動化の課題は、技術より組織のところで止まることのほうが多いものです。予想される反対を先に知っておくと、対応が楽になります。

「いまのやり方で問題はない」 たいていは事実です。問題は現在ではなく、処理量が増えたときに生じます。この反対には、現在の不便さではなく限界の地点を示してください。いまの人員で処理できる最大の件数を計算して見せるほうが、説得力があります。

「自分の仕事がなくなるのではないか」 もっとも強い反対であり、正面から答えるべきものです。自動化の対象が担当者の嫌っていた単純な繰り返し作業であること、そして空いた時間を何に使うのかを、先に決めて伝える必要があります。この答えが用意できていないと、調査の段階から協力が得られません。

「例外が多すぎてうまくいかない」 現場のこの言葉は、たいてい正確です。反論せず、例外の割合を実際に数えてみてください。 第2段階の評価の目的はまさにこれです。数えてみて例外が多いなら、その業務は候補から外すのが正しい判断です。

「前にやってみて失敗した」 失敗の原因を具体的に確認してください。ほとんどは、先に整理した三つのパターンのいずれかです。同じ誤りを繰り返さないという点を、根拠とともに示す必要があります。

導入後の90日

稼働の開始は終わりではなく、検証の始まりです。最初の90日で次を確認してください。

最初の2週間 — 並行運用。 自動化と従来のやり方を同時に回し、結果を突き合わせてください。この期間に見つかる不一致が、実際の例外の割合を教えてくれます。並行せずにすぐ切り替えると、誤った処理を数週間後に発見することになります。

最初の1か月 — 例外の類型の整理。 人に渡ってきた件を類型ごとに分類してください。特定の類型が繰り返されるなら、それは例外ではなく抜け落ちたルールです。ルールに反映すれば、自動処理の範囲が広がります。

3か月 — 基準線との比較。 導入前に記録しておいた所要時間・処理件数・エラー件数を再び測定して比較してください。この比較表が、次の課題の予算の根拠になります。

効果が想定に届かなかったなら、その事実も記録してください。どういう条件のときに自動化が期待どおりに働かないのかを知ることは、次の課題を選ぶときにもっとも価値のある情報です。

まとめ

自動化の成否は、道具の選択よりも対象の選び方で分かれます。

  • 繰り返しの業務を一覧にして、比較できるようにしてください。
  • ルールベースの自動化と判断を要する自動化を分け、検証の方法を変えてください。
  • ルールが明確で、入力が定型化されていて、例外が少ない業務だけを候補として残してください。
  • 回収期間は総人件費と運用費を反映して保守的に計算してください。1件あたりの時間より、発生件数が結果を支配します。
  • 最初の課題は規模ではなく確実さで選んでください。
  • 個人情報の処理の範囲とデータの保存場所を、着手の前に確認してください。

そして何より、導入の前に基準線を測っておいてください。測っていない改善は証明できず、証明されていない改善には次の予算がつきません。

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