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Global Growth

Webサイトの多言語化、翻訳だけではなぜ成果が出ないのか

海外からの流入は増えたのに問い合わせが増えないサイトには、共通点があります。検索・信頼・応対という三つの区間で取りこぼしが起きる箇所、ブランド用語を一貫させる方法、そして言語を増やす前に点検すべき項目をまとめました。

いま企業が置かれている状況

国内市場の成長が鈍るなか、海外へ販路を広げようとする企業が増えています。その最初の一手が、たいていWebサイトの多言語化です。既存のサイトを英語に翻訳し、言語の切り替えボタンをつけます。

ところが数か月後に指標を開くと、似たパターンが現れます。海外からの訪問者は増えたのに、問い合わせは増えていません。滞在時間は短く、多くが最初の画面で離脱しています。そしてこの結果はたいてい「まだ知名度が足りないから」とまとめられ、翌年にもうひとつ言語を追加することにつながります。

問題が知名度ではない場合は少なくありません。翻訳は多言語化のひとつの区間にすぎないのに、その区間だけを解決して残りをそのままにしたからです。海外のお客様が問い合わせに至るまでには三つの区間を通過する必要があり、区間ごとに別の理由で取りこぼしが起きます。

三つの区間で何が失われるのか

区間1 — 検索で見つけてもらえない

翻訳したページが検索結果に出てこなければ、その先の区間は存在しません。ここでよくある失敗は技術的なものです。

言語ごとの固有のURLがない場合。 JavaScriptで画面の文字だけを差し替える方式は、検索エンジンからひとつのページとしか認識されません。英語のページが検索の対象にそもそも含まれなくなります。言語ごとに別のURLが必要です。

言語どうしの関係を伝えていない場合。 同じ内容の韓国語版と英語版が互いの代替言語であるという情報を与える必要があります。この情報は hreflang 属性で伝え、各ページが自分自身を含むすべての言語版を相互に参照するよう宣言しなければなりません。この宣言がないと、検索エンジンは二つのページを重複コンテンツと見なすか、訪問者に誤った言語を表示します。

メタデータが翻訳されていない場合。 本文は翻訳したのに、ページのタイトルと説明文が韓国語のまま残っているサイトが意外に多くあります。検索結果に表示されるのは本文ではなくこの二つなので、ここが韓国語ではクリックされません。

検索語が翻訳されていない場合。 ここがもっとも見落とされがちです。国内で使っている用語をそのまま直訳すると、現地のお客様が実際に検索する言葉とずれます。翻訳は正確なのに検索にはかからない状態になります。翻訳の前に現地の検索語の調査が必要な理由です。

区間2 — 訪れたが信頼できない

ページにたどり着いた海外の訪問者が数秒のうちに判断するのは、製品の優秀さではなく「この会社は実在するのか、自分と取引できるのか」です。この判断を妨げる要素は、たいてい翻訳の品質ではなく情報の欠落です。

  • 現地の基準に合った連絡手段がない(国番号のない電話番号、国内のメッセンジャーのみの案内)
  • 会社の実体を確認できる情報がない(設立年、所在地、規模)
  • 取引の条件が明記されていない(最小数量、決済通貨、配送可能地域)
  • 現地時間を基準とした対応可能時間の案内がない

機械翻訳特有のぎこちない文章も信頼を損ないますが、上の情報が欠けていることのほうが致命的です。文章が少しぎこちなくても取引の条件が明確なら問い合わせは来ます。その逆は成り立ちません。

区間3 — 問い合わせたが応対が途切れる

最初の問い合わせまで届いたとしても、最後の区間が残っています。時差と言語です。

海外からの問い合わせは、国内の勤務時間の外に届きます。翌朝に返信したときには、相手はすでに別の会社と話しています。そして返信が国内担当者の第二外国語で書かれていれば、やり取り一往復にもう一日かかります。この過程で、初期の問い合わせの多くが消えていきます。

ここで必要なのは完璧な応対ではなく、すぐに反応することです。問い合わせを受け付けた確認と、返信の見込み時刻が自動で届くだけでも離脱は大きく減ります。よくある質問への自動の回答を用意しておけば、担当者が出社する前に相手は必要な情報の半分をすでに手にしています。

応対を自動化する場合は、回答の根拠を社内の文書に限り、確信の低い問い合わせは人に渡す経路を必ず設けてください。誤った回答ひとつが生む損失は、応対が遅れて失う損失より大きくなります。

ブランド用語を一貫させる方法

多言語化でもっともよく起き、もっとも遅く気づかれる問題が用語の不一致です。製品名がページごとに違う訳になっていたり、同じ技術用語が言語ごとにばらばらに表現されている状態です。訪問者はこれを「翻訳がぎこちない」ではなく「この会社は整っていない」と読み取ります。

この問題は翻訳の品質を上げても解決しません。翻訳するたびに判断が変わるからです。解決の方法は、判断をあらかじめ固定しておくこと、つまり用語集を作ることです。用語集には三種類の項目が入ります。

翻訳しない語。 製品名、サービス名、特許技術の名称、ブランドのスローガンのように、原形を保つべき固有名詞です。この一覧がないと、製品名が言語ごとに意味で訳され、海外のお客様が検索で見つけられなくなります。

言語ごとの標準の訳語。 業界の専門用語や技術用語は、言語ごとに公式の表現をひとつに決めておいてください。同じ概念がページごとに違う語で出てくると、検索での露出も分散し、信頼も下がります。

使わない表現。 ブランドのイメージに合わない語、現地で否定的な意味を持つ表現、競合を連想させる用語を、禁止の一覧として管理してください。

用語集は作ることより保つことが重要です。新しい製品が出るたびに登録する手順がなければ、半年後の用語集は現実と合わなくなります。登録の責任者を決め、新製品の発売の手順に用語の登録を組み込んでください。

言語を増やす前に点検する項目

新しい言語を追加する前に、いま運用している言語について次を確認してください。ここで詰まっている項目があるなら、言語を増やしても同じ箇所で同じように取りこぼします。

区間 点検の項目
検索 言語ごとに固有のURLがあるか
検索 hreflang で言語間の代替関係を宣言しているか
検索 ページのタイトルと説明文も翻訳されているか
検索 現地の検索語を調査して反映したか
信頼 国番号を含む連絡先があるか
信頼 取引の条件(数量・通貨・配送)が明記されているか
信頼 現地時間を基準とした対応時間を案内しているか
応対 受付の確認が自動で送られるか
応対 よくある質問への回答が用意されているか
一貫性 翻訳しない固有名詞の一覧があるか
一貫性 専門用語の言語ごとの標準語が決まっているか
測定 言語ごとに流入と問い合わせを分けて見られるか

最後の項目がとくに重要です。言語ごとに指標を分けて見なければ、どの区間で取りこぼしているのかが分かりません。全体の問い合わせ数だけを見ていると、「多言語化は効果がなかった」という誤った結論に至りがちです。

区間ごとに何を測るか

取りこぼしの箇所を特定するには、区間ごとに別の指標を見る必要があります。言語ごとに次の値を分けて記録してください。

区間 指標 この値が低いなら
検索 言語別の検索での表示回数 インデックスまたは検索語の問題
検索 検索結果のクリック率 タイトル・説明文が現地語になっていない
信頼 最初の画面での離脱率 信頼情報の不足または翻訳の品質
信頼 問い合わせページへの到達率 取引の条件が不明確
応対 問い合わせから返信までの時間 時差への対応がない
応対 問い合わせに対する商談の継続率 言語の壁または応答の遅れ

前の区間が詰まっていると、後ろの区間の数値には意味がありません。検索での表示がほとんどない状態で離脱率を改善しようとするのは、順序が逆です。前の区間から順に確認してください。

どの言語から追加するか

言語の選択は、市場の規模ではなくいまある証拠を基準にするほうが安全です。

  • 既存の訪問者の国・言語の分布を確認してください。すでに来ている言語圏が第一候補です。
  • 実際に問い合わせが来た国を確認してください。流入より強い手がかりです。
  • 競合が対応している言語を確認してください。すでに市場が形成されている証拠です。

市場の規模だけを見て言語を選ぶと、流入も問い合わせもない言語版を、維持費だけ払って運用することになります。言語は一度追加すると、以後すべてのコンテンツの修正のたびに費用が増える点を見込んでおく必要があります。

言語と国を混同しないことも重要です。同じ言語を使う国でも、通貨、配送の条件、規制は異なります。ひとつの言語版で複数の国に対応する場合は、取引の条件だけは国ごとに分けて案内してください。

運用の負担を減らすやり方

多言語サイトの実際の費用は、最初の翻訳ではなく運用で生じます。製品が追加されたり価格が変わったりするたびに、すべての言語をあわせて直す必要があるからです。この負担を減らす四つの原則があります。

原文と翻訳を分けて管理してください。 訳文が画面のコードに混ざっていると、修正のたびに開発が必要になります。文言をコードの外で管理すれば、翻訳の更新に開発が入りません。

変更の頻度でコンテンツを分けてください。 会社紹介のようにほとんど変わらない内容は丁寧に翻訳して固定し、価格や在庫のように頻繁に変わる情報は自動翻訳と人による検収を組み合わせるほうが現実的です。すべてのコンテンツに同じ品質を求めると、更新が滞ります。

更新の漏れを検知する手段を用意してください。 原文が変わったのに訳文がそのままという状態を自動で示してくれないと、言語版ごとに内容が少しずつずれていきます。この不一致は信頼を直接損ないます。

用語集を翻訳の手順につないでください。 用語集が文書としてだけ存在し、実際に翻訳する時点で適用されなければ何の効果もありません。翻訳を自動化するにせよ外部に委託するにせよ、登録された用語が自動的に適用される仕組みを作ってください。

コンテンツの種類ごとに基準を変えてください

すべてのコンテンツを同じやり方で翻訳しようとすると、費用はかさみ、更新は滞ります。種類を分けて基準を変えてください。

コンテンツの種類 変更の頻度 推奨する方法
会社紹介・ブランドメッセージ ほぼない 人が翻訳して固定
製品詳細・技術仕様 中程度 自動翻訳のうえ専門家が検収
価格・在庫・配送の情報 多い 自動翻訳 + 用語集の適用
規約・プライバシーポリシー まれ 現地の法務確認が必須
ブログ・お知らせ 多い 自動翻訳、必要に応じて事後に補正

とくに規約とプライバシーポリシーは翻訳の対象ではなく、現地化の対象です。国内の法を基準に作成された文書をそのまま移すと、文章は自然でも現地の規定を満たしません。進出する国が決まったら、この文書だけは別途確認を受けてください。

規制に関して先に確認すること

海外の訪問者を実際に受け入れ始めると、国内向けのサイトにはなかった要求が生じます。問題が起きてから対応すると費用がはるかに大きくなるため、先に確認してください。

クッキーと追跡ツールの同意。 欧州地域の訪問者に対しては、分析・広告の目的の追跡を事前の同意なく実行することはできません。同意バナーが実際に同意の前のスクリプトの実行を止めているかを確認してください。バナーを出しているだけでスクリプトはすでに動いている実装がよくあります。

個人情報の取得の告知。 問い合わせフォームで氏名と連絡先を受け取るなら、取得の目的・保管の期間・破棄の方法を現地の言語で案内する必要があります。

データが保存される場所。 訪問者の情報と問い合わせの内容が、どの国のサーバーに保存されるのかを把握しておいてください。地域によっては国外への移転に別途の告知や根拠が必要です。

自動応対であることの告知。 応対を自動化するなら、相手が人ではないと分かるようにしてください。この告知を求める規定は増えており、告知そのものが信頼を下げることもありません。

90日の進め方

一度にすべてを変えようとすると、たいてい着手そのものが先送りになります。区間の順に分けて進めてください。

1〜30日 — 測定と診断。 言語ごとに流入・離脱・問い合わせを分けて見られる状態を、まず作ってください。そのうえで前述の点検表で現在の言語版の状態を確認し、詰まっている区間を特定します。この段階では何も新しく作りません。

31〜60日 — 検索区間の整備。 言語ごとのURL、hreflang の宣言、タイトルと説明文の翻訳を整えます。あわせて主要な製品・サービスについて現地の検索語を調査し、文言に反映します。検索での表示は反映してから結果が出るまでに時間がかかるため、先に着手するのがよいでしょう。

61〜90日 — 信頼と応対の区間。 取引の条件、連絡手段、対応時間を現地の基準に整えます。問い合わせ受付の自動確認と、よくある質問への回答を用意します。同じ期間に用語集の草案を作り、登録の手順を決めます。

この順序の要は、測定を先に立てることです。測定なしに改善から始めると、90日後にも何が効いたのか分かりません。

まとめ

多言語化の成果は、翻訳の品質よりもどの区間まで対応したかで決まります。

  • 言語ごとの固有のURLと hreflang の宣言は、選択肢ではなく前提です。
  • 本文だけでなくページのタイトルと説明文も翻訳して、はじめて検索結果でクリックが起きます。
  • 現地の検索語を調べずに直訳すると、検索にかかりません。
  • 取引の条件と連絡手段の欠落は、ぎこちない文章よりも致命的です。
  • 固有名詞と専門用語は用語集で固定し、言語ごとの表現がぶれないようにしてください。
  • 時差を埋めるのは完璧な応対ではなく、すぐに反応することです。
  • 区間ごとの指標を言語ごとに分け、前の区間から順に点検してください。

言語をもうひとつ追加する判断より先に、いま運用している言語のどの区間が詰まっているのかを確認することが先です。

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